家族旅行での一枚。仲良く腕を組んで(写真提供:岩下志麻事務所)

30歳までは結婚しないと思っていたのに

――監督との結婚を決めたのは、『暗殺』(64年)の完成打ち上げの会でマンボを踊っていて、突然「この人と結婚する!」と閃いたからとか。志麻さんは子供の頃から霊感が強かった。

そうなの。私が子供の頃の夢で、大好きだったお祖母ちゃんを戸板に乗っけて大勢の小人がさぁーっと運び去って行くのを見たんですよ。お祖母ちゃん、亡くなったんじゃないの? と言ったら、翌日本当に亡くなっていました。

小津先生の時も、私の枕元に立って、「志麻ちゃん、やっと楽になったよ」とおっしゃった。それで母に、「小津先生、今日亡くなったみたい」と伝えると、「ええっ?」って。そして本当にお亡くなりになりました。ところが私、子供を産んだらストーンとその霊感が消えたんですよ。楽になりました。

それで『暗殺』の撮影の時にね、前のキスシーンのことがあったんで、私、京都にいる篠田に電話をしたんです。現場でいきなり、「はい、裸になって!」なんて言われたら困るので、「あの、ラブシーンはどのようにお撮りになるのでしょうか」って。

そしたら笑って、「僕はそんなひどい扱いはしませんから、安心して来てください」と、すご~く優しい声に聞こえたのね。(笑)

それで京都に行ったら、篠田も丁寧に扱ってくれて、共演の丹波哲郎さんも親切にしてくださいました。あの方は私のこと「志麻子」って呼ぶの。

催眠術がすごかったですね。みんなの前で「手が開かなくなる~」って言うと、本当に私の手が開かなくなるの。そしてパーンと手を叩くと、フワッと手が開くんです。

すごい、と思っていたら、「二人きりの部屋でやれば、将来結婚する人を出してあげるよ」と言われて。そんなことして「君は裸になる~」なんて暗示をかけられたら困りますから(笑)、それはお断りしました。