――京都で撮影が終わると、監督と二人、先斗町でよく飲んだとか。
よく、でもないわよ。2、3回。その頃は私もお酒が強かったので、最初のデートで二合徳利が10本並んだわね。篠田はずっと映画の話を大学の講義みたいに話してて、私は生徒のようにおとなしくそれを聴いてましたから、全然酔わなかった。
その後、東京へ帰って、赤坂のニューラテンクォーターという所での打ち上げで二人で踊った時に突然閃いて、「私、監督と結婚するような気がする」って言っちゃったの。
ほんとは束縛されるのがいやだから、30歳までは絶対、結婚なんかしないと思ってたのに、なぜそんなこと言ったかわからない。そうしたら篠田はパッと引いちゃって、向こうに行っちゃった。清純派だと思ってたのに、とんでもない! って思ったらしいの。(笑)
それからしばらく会わないでいたんだけど、篠田が脚本家の白坂依志夫さんとパリに行った時、金の模様の入ったとても素敵な黒いハンドバッグを買ってきてくれたんです。それを持って、私の家に来てくれました。今でも取ってありますよ、そのバッグ。

