これはいい物を見つけたと喜んで、さっそくレジに向かい、購入した…(写真:stock.adobe.com)
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カッコいいTシャツ

家の近所のリサイクルショップがリニューアルしたので覗いてみた。今までCDのレンタルコーナーだった2階が、服やバッグ、靴のリサイクルコーナーに変わっていたので、何か掘り出し物はないかと見て回る。すると、素敵なデザインのTシャツがあるではないか。

私好みの緑色の生地に、クマのイラストが黒でプリントされていて、何やらコケティッシュでありながらカッコいい。これはいい物を見つけたと喜んで、さっそくレジに向かい、購入した。値段が500円というのも嬉しい。

お気に入りの一着となり、いろいろな場面で着用するように。スポーツクラブに買い物、散歩……。ある日、病院を受診したときにも着て行った。すると診察室で先生が突然、「僕もこのTシャツ持ってるんだ。走ったの?」と。私がキョトンとしていると「ほら、マラソンだよ」。それでやっと気がついた。このTシャツは、どうやらマラソン大会の記念品らしい。

黙っていると、先生はなおも私を問い詰めてくる。「え、走ってないの? じゃあ誰かにもらったの?」。私は言えなかった。「近所のリサイクルショップで、500円で買いました」なんて。だから小さな声で「はい」とだけ答えてごまかした。先生はどうやら完走したらしく、「懐かしいな。今はパジャマになってるけどね」と締めくくる。

調べてみると、「2021年○○トレイルマラソン」と英語で書かれていた。私の住む街で毎年開催されているマラソン大会だ。そのロゴが小さかったから気づかなかったんだ……という言いわけは、高校時代、英語の成績が2であった私には通用しない。顔から火が出そうになった。周囲の人たちには「そんな何年も前のマラソンを走ったことを、まだ自慢したいのか」と笑われていたのではなかろうか。

あまりに恥ずかしいので、この話は友人たちに喋って笑いをとるための鉄板ネタとして、かたきをとっている。


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