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連続テレビ小説『ばけばけ』(NHK総合)。朝ドラ通算113作目となる同作は、明治時代の松江を舞台に『怪談』で知られる小泉八雲の妻、セツをモデルにした物語。ヒロインの松野トキ役を高石(高ははしごだか)あかりさん、夫で小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)をモデルにしたレフカダ・ヘブン役をトミー・バストウさんが演じ、怪談を愛する夫婦の何気ない日常が描かれます。史実では来日後、記者の仕事を捨てて40歳で松江の英語教師となり、執筆活動を続けた八雲ですが、なぜ彼はそこまで日本に惹かれたのでしょうか?『八雲とセツを追いかけて-神様と妖怪に出会う旅-松江・境港・出雲』の著者で文筆家の譽田亜紀子さんが謎に迫ります。

小泉八雲記念館へ

日本が西洋中心主義に傾いた明治という時代、西洋人であった八雲が、ニューオーリンズで日本文化に触れたとはいえ、どうしてこんなにも強烈に日本という国に興味を持ち、そこに生きる人々の魂まで理解したいと思ったのか、不思議で仕方がなかった。

日本の何に彼はそんなに惹かれたのか。もしかするとそれを知ることが、日本を改めて知ることになるのかもしれない。

そんな思いを胸に向かったのは、塩見縄手(しおみなわて)の一角にある小泉八雲記念館である。

「その眼が見たもの」
「その耳が聞いたもの」
「その心に響いたもの」

という3つのコンセプトを掲げ、小泉八雲の生涯を紹介している同館。

彼の生立ちはもとより、来日した時のトランクや洋服、のちに収集したという煙管(きせる)や八雲の東京の書斎の再現など、彼にまつわるさまざまな品や作品が展示されている。