「やり遂げること=正解」ではない時代へ

一般的に、すぐに仕事を辞めて転職を繰り返すことは、あまり良くないこととされます。しかしその一方で、自分に合わない環境で我慢を重ね、ストレスをためて体調を崩し、結果として社会復帰に時間を要する人もいることも事実です。

それが本当にやりたいことなら、我慢にも意味はあるでしょう。しかし、実際にやってみた結果、「自分には合わない」「想像していたものと違う」と気づいたとき、潔く進路を変えることは、決して後ろ向きな選択ではありません。

『3万人の親子に寄り添ってきたスクールカウンセラーが伝えたい 10代の子どもの心の守りかた』(著:普川くみ子/実務教育出版)

むしろ自分自身を守り、貴重な10代の時間を有効に使うためにも、違和感や理不尽さを感じたときには、その場に耐える力よりも「別の道を選ぶ柔軟さ」のほうが大切です。

ある高校生の話です。

彼は小学生の頃から地域のバレーボールチームに所属していましたが、次第にバレーボールへの熱意が薄れていくのを感じるようになりました。

それでも、高校はバレーボールの推薦で進学していたため辞めるわけにはいかないという思いと、親やチームメイトの期待に応えなければならないというプレッシャーから、「辞めたら周囲にどう思われるだろう」と心配し、無理に続けていました。

しかし、ある日その生徒は思い切ってコーチに「バレーボールを辞めたい」と伝えました。親も最初は戸惑ったものの理解してくれ、その後は勉強に集中できたおかげで、自分が学びたかった大学に進むことができました。

無理に続けることよりも、自分の気持ちに正直に向き合うことで、結果としてより充実した学生生活を送ることができたのです。

長いようで短いのが人生です。その貴重な時間を、周囲の期待や人目を気にしながら、「合わない」「つらい」「逃げ出したい」と思う場所で過ごすことに、本当に意味があるのでしょうか。私は、そうは思いません。