「やめる」経験が、子どもをしなやかに育てる

ただし、習いごとや受験にはお金がかかることも事実です。無制限に挑戦したりやめたりするのは、現実的に難しいでしょう。だからこそ、まずは親子での対話が大切です。

「何でも応援するって言ったのに」というトラブルを避けるためにも、12歳をすぎた頃から、少しずつお金の話をしていくのも大切です。高校生くらいになれば、家庭の経済状況もある程度は理解できます。

たとえば、「あなたがやりたいことは全力で応援する。ただ、それがお金のかかることなら、本当に興味のあることかどうか、自分でもよく考えてみてね」と伝えたり、「まずは体験から始めて、続けられそうか判断しようか」といったやりとりも有効です。

そして、子どもが「やっぱりやめたい」と言ってきたときには、「続けるって言ったのに」などと責めるのではなく、「やってみたからこそ分かったんだね」などと、ポジティブな言葉で子どもの経験を“学び”に変えてあげてほしいのです。

そうした経験を重ねることで、子どもたちは「人生にはたくさんの選択肢があるんだ」「何度でもやり直しができるんだ」ということを、実感として学んでいくのです。

子どもの本音
「やめたいって言ったら、がっかりするかな……。でも、『それもアリだよ』って言ってくれたら、ホッとする」

 

※本稿は、『3万人の親子に寄り添ってきたスクールカウンセラーが伝えたい 10代の子どもの心の守りかた』(実務教育出版)の一部を再編集したものです。

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