イメージ(写真提供:Photo AC)
身近な人に看護・介護が必要になったとき、みなさんはどこに相談しますか?
総合的な相談先として、主治医の所属機関を問わず、活用できるのが「訪問看護ステーション」です。
その地域に開かれた独立した事業所である「訪問看護ステーション」に、黎明期から関わり、自ら起ち上げた「桂乃貴メンタルヘルスケア・ハートフル訪問看護ステーション中目黒」で、自分自身も看護に当たるのが渡部貴子さん。
自らの経験を元に、介護や看護で困っている方への質問・疑問に答えてもらうのがこの連載です。第14回目は、「子どもの不登校への理解と対策」についてです。
(構成:野辺五月)

前回「介護や看護に困ったら【おとなの相談室】13」はこちら

子どもの不登校とは?

Q:ゴールデンウィークが終わってから、徐々に子どもが学校に行かなくなりました。どうしていいのか分からず、暫く休ませていたのですが、一向に登校する気配がありません。このままだと勉強が追い付かなくなるのではないか?みんなと交わらないでいるのではないか?親の身として不安があります。どうすればいいのでしょうか。誰にも吐き出せず……先生に話をきいてみたいと思い、投稿しました。ちなみに公立の中学校2年生です。

A:親の焦りはどうしても子どもに伝わります。けれど、親も同じ人間……イレギュラーなことが起こったことで、不安になる気持ちも重々理解いたしております。まずは深呼吸。子どもの不登校について、理性的に状況をひもといていきましょう。

2023年度の文部科学省の調査によると、小中高の不登校児童生徒数は過去最多の41万5252人に達し、11年連続で増えており、特に学年が進むにつれて不登校も増える傾向が見られます。

それに対して、実は「令和6年度夜間中学等に関する実態調査」の結果からは、夜間中学に通う日本国籍の生徒が2年間で1.4倍になっているということも明らかにされており、39歳以下の若年層の学び直しを希望する割合も高まっています。

このように数字を追いかけていくと、大分社会的な理解も得られるようになったものだと思いますが、不登校は依然増えており、いざ身内の問題になると横たわる日本ならではの問題もあります。

日本では学校にまつわるさまざまな「暗黙知」があるのです。

意識をしていない、言語化されていない部分なのですが、「みんな一緒のはず」=「学校には行くもの」「社会に出るには学校がまず重要」という暗黙の了解こそが、なかなかに子どもにも親にも重くのしかかっているようです。

まず子どもが不登校になった段階で、質問者の方が戸惑いながらも、「どうしていいのか」をベースに考えていらっしゃることに安心いたしました。

親側が「早く解決すべき」「すぐにでも行くようにしたい」と希望を前面に出してしまうと、子ども側は敏感に感じ取り我慢をする傾向があります。

まず見ていきたいのは、何が理由なのかということ。いじめや障害など、あるいは家庭内部での問題に関係しているようであれば、周囲が頑張って阻害されてしまう理由を取り除き「解決」へ導く必要もあるでしょう。ただ、そうでもなければ、絶対に学校へ行かないとならないのか?行かないと困ることは何か?反対に、行かなくても進められる今後の進路への用意や、コミュニケーションの形は何か?……模索出来ることは実は沢山あるのです。

文科省の追跡調査では、中学校3年時の不登校者の85%が高校への進学は決めていました。

これは少し前のデータではありますが、上記学び直しの場所への参入増加も含めて考えますと、いろいろな方法から再び学校へ戻るケースもあれば、専門的なことを学んで社会に立つケースなど多岐に渡ってきていることが明らかです。

また不登校になっている子どもが通う学校が「公立なのか私立なのか」「中学なのか高校なのか」で状況は違います。というのも、学校によっては留年や退学になる場合があるからです。

特に私立は学費の問題もあり、やむを得なく転校させるというお話も聞きます。それ以上に「学校の方針」によって不登校への扱いがかなり違います。一部の私立は教員が通常業務以外の仕事として補習を行う必要があるため、労力・コストがかけられない学校はやんわりと退学を促す場合があります。かと思えば、最近は不登校特例校として特別な教育課程を編成していたり、履修学年を特定しない学校指定科目を設定していたりする学校も出てきました。また不登校の生徒向けの補習を個別でする神奈川県私立中学高等学校協会のような例もあるので、調べてみることが大切です。

公立でも、高校は場合によっては退学・留年もあり得ますが、基本的に学校とコミュニケーションをちゃんと取ることでさまざまな手が打てるようになっています。

質問者さんは公立ということなので、中学までは義務教育でもありますし、当然そのまま在籍できます。不登校特例校以外でも試験だけ別途受けることも可能ですし、スクールカウンセラーによる指導や保健室通学の推奨などもありますので学校とコミュニケーションをしっかりとっていくことも大切でしょう。一部の都道府県では、不登校の生徒のために、調査書の欠席日数に関わらず、面接などを重視する「不登校枠」も用意しています。出席日数や中学の成績をほぼ審査しない学校も公立私立問わずありますので心配しすぎる必要はありません。