「子どもに遠慮」は、むしろ逆効果になることも

真面目な親御さんほど忘れがちな視点ですが、子どもの悩みや苦しみを、親が肩代わりする必要はありません。

もし肩代わりすることで子どもが本当にラクになるのなら、それも意味があるでしょうが、残念ながらそれは不可能です。

『3万人の親子に寄り添ってきたスクールカウンセラーが伝えたい 10代の子どもの心の守りかた』(著:普川くみ子/実務教育出版)

子どもと同じように苦しい気持ちになり、一緒に家にこもる。そうして、親も次第に心身のバランスを崩し、夜眠れなくなったり、食欲がなくなったり、人と会うのが億劫になったりしていく。

そんなふうに、親子ともに元気を失っていく状態を、私は「親子が共に沈んでしまう」と表現しています。一見すると、それは「子どもに寄り添う思いやり」に見えるかもしれません。

しかし、それで子どもを支える力を失ってしまっては、本末転倒です。子どもも、そんな親の姿を望んでいないはずです。

私は、それよりも「親がどんなときも元気でいること」のほうが、ずっと大切だと考えています。親は親で、できることだけをすればいい。子どもの様子に気を配りつつ少し距離をとり、楽しいことに目を向け、子どもを支える力を養っていけばいいのです。

心と体に余裕が生まれることで、子どもがふと話しかけてきたとき、その言葉を丁寧に真正面から受け止めることができたり、「一緒に考えてほしい」と言われたときに、落ち着いて一緒に道を探すことができます。

しっかり充電してきたからこそ、“ここぞ”という場面で親としての力を発揮できるのです。