ヨナに励まされともに旅をした気分
一人芝居『ヨナ』の作者マリン・ソレスクはノーベル賞候補とも言われるほどの詩人で、ルーマニアの教科書にも載っている、宮沢賢治みたいな人だとか。
――そうなんです。ご縁を感じたのは、彼が『ヨナ』を書いたのが1968年ということ。僕が生まれた年なんですよ。作品が生まれた年に生まれた赤ん坊が、のちにその作品を演じる、って、何か詩のようですよね。
ヨナというのは旧約聖書に出てくる預言者ですけど、ある時大きな魚に飲み込まれて、三日後に脱出するという人物です。闇の中で光を求めて、孤独と向き合って戦ってる男だけれども、「この逆境の中で、そんな脱出の仕方をするのか。お前面白いな」っていうふうにチャーミングに作ってみようかと。そのプランはプルカレーテさんも受け入れてくださいました。
一人でルーマニアに行って一人芝居を作っている僕自身の存在が、なんとなくヨナに似ていて、ヨナに励まされ、ともに旅をした気分で今、いますね。
この芝居はすべてが論理的に書かれているわけではなくて、台詞も詩的だったり、やっぱり観る方の想像力に委ねるところもあります。だから面白いし、子どもでも楽しめるようなキャラクターにしようと思ったわけです。