演劇の力を感じて
演劇ってすごいなあと思うのは、過去と現在が瞬時に入れ替わることができる点です。説明がいらないんですね。人がちょっと後ろを向いたり、照明がちょっと変わっただけで、タイムスリップができてしまう。映像ではこうはいきません。本当に舞台とは不思議な空間だとつくづく感じます。
本作では、現在と過去が行ったり来たりしますが、流れている空気はとても緩やか。舞台上では過ぎていく時間の速さを感じさせない、例えるなら、鳥居をくぐって神社に居る時に感じる雰囲気に近いかもしれません。
舞台のタイトル『明日を落としても』を最初聞いたときは、パッとイメージが浮かばなくて。稽古を通して一生懸命考えています。ピンク(ピンク地底人3号)さんはこの物語を1年半かけて書いたそうです。その間、どんな思いを抱かれていたのかなあ。実は台本をいただいたのはもう半年以上前なのですが、それから何度も変更があって、シーンが変わったり、セリフが変わったりしたんです。それはみんなピンクさんの葛藤の表れなんだと思っています。ですから、ピンクさんがどんな思いでこのタイトルをつけられたのか、千秋楽までにその片鱗にでも触れられたらって思っています。
演出家の栗山民也さんは、舞台『母と暮せば』でもご一緒しました。とてもたくさんの俳優さんたちをみてきているので、たぶん、私のことも「こういうタイプの女優なんだな」とかなり分析されていると思います。
でも私は栗山さんのことを1%もわかっていない(笑)。栗山さんって同時に何本もの作品を演出されていて、守備範囲が広すぎる! たぶん非常にお忙しいはずですけれど、いつもとても穏やかにふるまっていて、これが癒されるんですよね。