写真提供◎舞台「明日を落としても」
2025年で芸能生活42周年を迎えた女優の富田靖子さん。1983年、およそ12万7千人の中から映画『アイコ十六歳』のヒロインに抜擢されたときはまだ14歳だった。自ら女優になることを決め、その道を歩み続けている富田さんは、映画、テレビ、舞台と幅広く活躍中。10月は舞台『明日を落としても』に出演が決まっているという。
56歳とはとても思えない少女のような笑顔が印象的な、たおやかなたたずまいを見せる富田さんに、舞台にかける意気込み、そして自身の女優生活について聴いた。(構成:吉田明美)

舞台『明日を落としても』の役どころ

今回の舞台『明日を落としても』は、阪神・淡路大震災の復興のシンボルとして設立された、兵庫県立芸術文化センターの開館20周年記念公演です。阪神・淡路大震災をモチーフに、演劇界注目の脚本家、ピンク地底人3号さんが描いた物語を、栗山民也さんの演出でお届けします。

私は、高校生の一人息子がいる母親・神崎真美を演じます。「お母ちゃんってさ、死ぬほど美人やから」と言われるセリフがあって「私、この役やってもいいのかしら?」と思ったりもしましたが(笑)、真美は息子が大好きで、起こってもいないことをあれこれ心配する母親として描かれています。それってやっぱり過保護なのかしら? 実は真美の気持ちがとってもよくわかるんです。私も娘に対してけっこう過保護なタイプなので…。(笑)

私は実の息子はいませんが、男の子という存在は、おかあさんにとって圧倒的な魔法使いだと思っています。幼稚園児ぐらいの息子に「ママ!」なんて呼ばれたらもうすべてが吹っ飛びそう!だから今回は、男の子のお母さんである真美を演じられるのは幸せです。

主演は佐藤隆太さん、私の息子役は牧島輝(ひかる)さん、ほかにも川島海荷さん、酒向芳さん、尾上寛之さん、春海四方さん、田畑智子さんなど、豪華なメンバーが揃いました。映像で共演した方は多いのですが、舞台では初めての方ばかりです。

実は、このところ二人芝居が続いていたので、舞台でこんなに大勢の方とお芝居をするのは久しぶりなんです。最初は、人がいっぱいいて「まあ、どうしましょう」と思っていました。いろいろな役の感情が舞台で絡み合うって、大変だなあって…。二人でも大変なのに、どうなってしまうんだろうと思っていましたが、なんとかなるものですね。それぞれの思いをふんわりぶつけながら形になっていき、初日を迎えるのだろうと思います。