演出・栗山民也さんから学ぶこと
演出家によっては自分のイメージの中に役者を導く方もいらっしゃいますが、栗山さんの場合は、いつの間にか役者が自然とそっちのほうに向かうような演出だと思います。栗山さんの中にあるイメージがよくわからないまま、気づいたらそのように動いている感じと言いますか。なにかを押し付けられている感じはないんです。
『母と暮せば』のとき、最初に「そんなに大きな声、出さなくていいよ」と言われたときはびっくりしました。演劇で? 舞台で? だって大きな声を出さないと、後ろの席まで声が届かないでしょう? と頭の中にたくさんのはてなマークが飛び交って…(笑)。でも栗山さんは「そんなに伝えようとしなくても、お客さんはちゃんと感じ取ってくれるから」と。
それで共演した松下洸平さんと二人で「声を落とすように言われたけど、いったいどのぐらい落とせばいいの?」なんて相談しながら、舞台と客席で「何列目ぐらいまで聞こえる? これぐらいならどう?」と声の大きさを調整しました。栗山さんの「お客さまが感じ取ってくれる」という言葉は大きな気づきでしたね。今はちゃんと、お客さまを信用していいんだ、と思えることができています。
栗山さんってもともと言葉数が多い方ではないし、声を荒げることもありません。若い役者さんからベテランの役者さんまで、誰に対しても同じように接して、「相手の言葉を感じてください」とアドバイスされている。数年に一度ご一緒するたびに小さな気付きが積み重なっているのですが、それが自分の力になっているのかさえ、よくわからない。たぶん今回もいつの間にか始まっていつの間にか終わっていくんでしょうね。(笑)
兵庫県立芸術文化センター開館20周年記念公演『明日を落としても』
【兵庫公演】
日程:2025年10月11日(土)~16日(木)
会場:兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
【東京公演】
日程:2025年10月22日(水)~27日(月)
会場:EX THEATER ROPPONGI
[作] ピンク地底人3号
[演出] 栗山民也
[出演] 佐藤隆太 牧島 輝
川島海荷 酒向 芳 尾上寛之 春海四方
田畑智子 富田靖子