共に暮らせば情が移る
生き物に関しては、そもそも父と母が好きだったんだよ。僕が小学1年生くらいから雑種犬の「ジョン」と猫の「ピリカン」がいて、それから柴犬の「ジョン」二世、シェパードの「ジョン」三世と続き、独身最後に飼ったのが、僕が仕事で知り合ったアナウンサーの宮崎総子(ふさこ)さんから譲り受けた白い犬でした。
当時僕は『コーラスライン』でポール・サンマルコという役を演じていたので、母が「ポール」と名前をつけてね。僕を思いながら「ポール」って呼んでいたんだと思う。
親父は一時、うちにやってくるスズメに、旗をつけた爪楊枝をくわえて振らせるという芸を仕込んでいた。家の前を通る知り合いに自慢げに見せていたんだと思うけど、僕も「さすが親父だな」なんて思ってました。あの頃の犬やスズメのことを思い出すと、父と母の元気な姿が浮かんで、ちょっと涙しちゃうよ。
僕自身は基本、両親や子どもたちが飼い始めた生き物の世話をせざるをえなくなった人間です。世話をするのは面倒くさくて大変だけど、だからこそ充実しているんだよね。それに、一緒に暮らしていると情が移るの。
長男が好きなヘビなんて、決して好きにはなれないけど(笑)、ケージの中でじっと動かないでいるのを見ると、「大丈夫か?」とやっぱり気になる。人間のなかにはそういう情があるものだろうし、でないと、情のある芝居はできないと思うんだ。
ヘビのサンド(写真提供:市村さん)
