舞台、映画、ドラマにと幅広く活躍中のミュージカル俳優・市村正親さん。私生活では2人の息子の父親でもある市村さんが、日々感じていることや思い出を綴る、『婦人公論』の連載「市村正親のライフ・イズ・ビューティフル!」。第11回は「《結晶》を見つけるために」です。(構成:大内弓子 撮影:小林ばく)
表面だけを演じても……
8月は、舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』に3つの役で出演しています。稽古前には、息子たちに「何回観てるの?」とツッコまれながら(笑)、映画を見直して役の勉強をしました。
まず、死んだ息子を取り戻そうとしているエイモス・ディゴリー。映画の英語のセリフを聞くと、息子が殺されたとき、「スペアを殺せ」と言われているんです。息子を「代用品(スペア)」呼ばわりされた父親の悲しさはいかばかりか……。
それから魔法学校の校長、アルバス・ダンブルドア。ハリーを息子のように思いながら、自分が愛したものにはいつか必ず害が及んでしまうとわかっている。
セブルス・スネイプ先生だって、服に25個のボタンがついていて、それを一つずつ留めることで自分の本心を外に出さないようにしていたというんだから、それぞれ壮大なドラマを抱えていて。出番は少ないけれども、簡単に演じられるものではないんです。