「最近、ステキな本に出会っていますか?」左から、重松清さん、芦田愛菜さん、伊藤氏貴さん(撮影:木村直軌)
作家・重松清さんをホストに、個性豊かなゲストと語り合う連載「井戸端会議2020」。今回のテーマは「本」。高校国語の教科書から文学作品が減りつつあります。若い人が本を読まなくなったと言われる今、国語教育のこれからを懸念する声も。そこで今回は、明治大学准教授・文芸評論家の伊藤氏貴さんと、大の本好きで、この春、高校1年生になる芦田愛菜さんをゲストに、本を読む楽しさ、文学にふれることの意義を語りあいました。ステイホームの今こそ、本を読んでみませんか?(構成=福永妙子 撮影=木村直軌)

本が本を呼び世界を広げる

重松 愛菜さんは、年間100冊以上も本を読んでいるとか。

芦田 私にとって本を読むのは、お風呂に入るとか歯を磨くのと同じ、生活の一部になっています。

重松 ご著書『まなの本棚』には、日本の現代作家の小説はもちろん、平安時代や江戸時代のもの、外国文学も紹介されています。読むジャンルはさまざまですね。

芦田 海外ミステリーにハマっているときもあるし、古典や明治の文豪の作品を読みたいなと思うときもあります。とにかく、いろいろな本を読んでみたいんです。

重松 本と出会ったきっかけは?

芦田 小さいときから、父も母も絵本の読み聞かせをしてくれましたし、私のために図書館で本を借りてきたり、常に身のまわりに本がある環境をつくってくれていました。子どもの私にとって本はワクワクさせてくれるもので、「何かほしいものは?」と聞かれると、いつも「本がほしい!」と。

重松 今の時代、マンションのモデルルームにも、本棚のない部屋は多いんですよ。

伊藤 学生も、ますます本を読まなくなっていますね。私が学生の頃はまだ、読んでいないことに対する羞恥心がありましたが。

重松 そうそう。友だち同士、ある本の話をしているときに自分が入っていけないとつらくて、うちに帰ってあわてて読むという。僕と伊藤さんは50代ですが、昭和の小学生って、身近なところに本がたくさんありましたね。親の本棚からこっそり本を抜き取って読んだり。背伸びしてね。

伊藤 私も、読書に目覚めたのは親の本棚にあった本からでした。小学生のときに北杜夫の「どくとるマンボウ」シリーズにハマり、そこに出てきた中学校に憧れて、その中学を受験したほどです。

重松 愛菜さんは、お父さんやお母さんの本棚から本を抜き取って読んだ経験は?

芦田 それはないです(笑)。でも『国盗り物語』は、時代小説の好きな父から借りて読みました。小学6年生か中学1年生の頃かな。

重松 その年齢で司馬遼太郎ですか。すごいなあ。

芦田 ちょうど当時の歴史を学校で習っていて、それで興味があったのだと思います。