トイレに行くこともできない面白さ
『羊たちの沈黙』は34年も前の作品だが、今見ても斬新極まりない。「えっ、食人?カニバリズム?皮を剥ぐ猟奇殺人?」
いかにも恐ろしげな場面や言葉が並びアンソニーのキレッキレの演技に度肝を抜かれて、トイレに行くこともできない面白さ。恐ろしい場面ばかり見せられたはずなのに、観終わってから「レクター博士、彼は何物? 彼に会いたい!!」と、ほぼレクター博士に恋愛状態になってしまった。
そしてアンソニーについて調べると、彼が役者であるだけでなく、画家であり作曲家であると知る。しかもオーケストラ編曲して、アンドレ・リュウの指揮で、大劇場で演奏されたりしている。この動画はYouTubeで簡単に検索できるので、ぜひご覧いただきたい。アンソニー・ホプキンスとは要するに、「天才」ということなのだろう。

しかし、最近開設された彼のインスタグラムを見れば、楽しそうに踊る老人、粋な仲間と音楽やダンスを楽しむ様子、孫に絵を教える実に穏やかな姿が投稿されている。そこにハンニバルの面影は全くない。映画とは違うこの「普通」さが、さらに彼の魅力を引き立てているのかもしれない。