暖かい演技のアンソニー

さて、『羊たちの沈黙』のヒットの後『ハンニバル』制作までには10年の歳月が流れ、その間にアンソニーは『ハワーズ・エンド』やカズオ・イシグロ原作の『日の名残り』といった文芸作品に出演、レクターとは全く違う人物を演じている。ことに『日の名残り』の執事役のすばらしさと言ったら!!

「私も、こんな人好きになる。何故スティーブンス(アンソニー・ホプキンス)はあの時ミス・ケントン(エマ・トンプソン)と結婚しなかったの!!」と、地団駄を踏みたくなるくらい、魅力的な主人公。エマの演技も脚本も素晴らしく、私はすっかりエマの気持ちに入り込んで、最後は号泣しちゃいました。  

こちらはどんな女性でも、いや男性でも、ジーンと来ること必見。こういう暖かい演技のアンソニーは、『アトランティスの心』などでも楽しめます。また、若い頃のホプキンスの魅力なら、『マジック』(1979年)をどうぞ。こちらは珍しいラヴ・シーンもあり!

アンソニー・ホプキンス さかもとさん漫画
 

現在アンソニーは87歳だが、現役感満載。最近の作品では2019年の教皇ベネディクト16世を演じた『2人のローマ教皇』が秀逸。そして2020年公開の、認知症で過去の記憶と現実の境界が混濁していく老父を演じた『ファーザー』では、史上最高齢での「主演男優賞」を獲得している。こんな87歳、最高である。奥様が本当にうらやましい!!

60年生きてきて、「追っかけしたい!!」と思う俳優に出会ったのは彼が初めて。「ジジイ・マニア」の魂を激しく揺り動かしていただいたのでございます(感涙)!もしも彼にインタビューできる企画ございましたら、ぜひ振ってくださいませ~!

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