1989年に漫画家デビュー、その後、膠原病と闘いながら、作家・歌手・画家としても活動しているさかもと未明さんは、子どもの頃から大の映画好き。古今東西のさまざまな作品について、愛をこめて語りつくします!(写真・イラスト:筆者)
「普通の人」に収まらない容姿
彼の顔は少し歪んでいる。少なくとも美男子ではないのだろう。が、いい意味でも悪い意味でも一度見たら忘れられない。向かって右側の額が広く、右目は左目のやや斜め下に位置する。よってシンメトリーでない顔は歪んで見えるのだ。彫りは深く、深く暗い影が、異様に光るブルーグレーの瞳を囲んでいる。その目力の強いことといったら!
アンソニー・ホプキンスの顔は、純粋すぎて生きるのが下手な若者や、ストイックな執事、聖職者、あるいは冷酷無比な殺人者や異常者の役によく似あう。要するに「普通の人」に収まらない容姿。その肉体に天才的と称される演技力が宿り、「常軌を逸した」キャラクター造形を可能にした。かの『羊たちの沈黙』における、レクター博士のような。
アンソニー・ホプキンスはウェールズの港町のパン屋の息子だった。いじめられっ子は若者になると演劇に生きる道を見出し、成功。遂に「knight」の称号を授けられ、「Sir・アンソニー・ホプキンス」と呼ばれるようになった。
彼自身が伝説で文化財と言える存在になれたのは、彼が「アスペルガー症候群」を抱えていることと無関係ではないだろう。普通と違う精神を持つからこそ、あのハンニバル・レクターを演じきれた気がする。