劇場の中を走り回った
海外の演出家は、役者といろいろ話し合いながら舞台を作っていくのが面白いですね。フィリップはとくに、役者から出てくるものを待ちながら、戯曲の背景なども含めて細かく話してくれるんです。
以前、テネシー・ウィリアムズ作の『欲望という名の電車』でご一緒したときは、「いまテネシー・ウィリアムズと交信するから」なんてユーモアを交えながら、なぜここでこの言葉を使うのかなど、丁寧に教えてくれました。
イギリスでは演出家や監督と役者が対等で、きちんと理解してからでないと役者は動かない、と聞きます。そういえば、蜷川幸雄さんが、「海外の役者はすぐ理論を語り始める。『動きゃいいんだよ!』と思うけど」なんて言ってました(笑)。それも一つのやり方だし、演出家によって方法論が違うのは面白い。
私にとって蜷川さんとの出会いは、役者人生においてものすごく大きな意味を持っています。蜷川さんの稽古場の熱量と緊張感は、ほかになかなかないものでしたし、たぶんこれからもないと思う。稽古初日から役者に求めるものが高く、それに応えるのが楽しかったですね。