もう、「最高の遊び場」という感じで、楽しくて楽しくて。「これ、見て見て!」という感じで臨んでいました。蜷川さんの場合、稽古の初期から本番さながらの衣装を着てやるんです。スウェット姿なんかで来たら、「おまえ、帰れ!」と言われてしまう。

ほかの演出家との作品で悩んでしまい、相談したくて蜷川さんに電話したことも。すると、「そんなちっちゃなことで悩むんじゃないよ。オレたちが目指しているのは世界だから」。思わず「はいっ!」と返してしまいました。

シェイクスピア作品もいくつかご一緒しましたが、2002年に蜷川さんの演出で初めてニューヨークで『マクベス』の舞台に立ったとき、なんだか私うれしくて、劇場の中を走り回りました。

8割くらいは海外のお客様でしたが、演劇は国境を越えていくものだし、こんなにも自由なものなんだと、あらためて体感したんです。蜷川さんと一緒に勝負してきた舞台はすべて、大切な思い出です。

今回の『リア王』は、蜷川幸雄さんの生誕90年を記念したメモリアル公演です。蜷川さんとフィリップはまったく違うタイプの演出家ですが、私の役者人生において本当に大切な二人。いまも心の中に蜷川さんがいるので、今回の芝居もきっとどこかで観ていてくれる、と思っています。

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