今、日本が抱えている課題は……

工藤 乱暴な言い方ですが、日本が経済成長した最大の理由は、明治維新からわずか140年間で約1億人も人口が増えたことで、労働力や購買力が下支えされたからです。教育が一番の理由ではないのです。

今、人口が急激に減少していく段階に入り、日本の社会全体が切羽詰まっています。教育界にも、大きな危機感が広がっています。その理由は、グローバル化によってデジタル化やAIといった技術進化のスピードが尋常ではなくなったからです。

(写真はイメージ。写真提供:Photo AC)

欧米ではITを教育に取り入れるのは当たり前で、地方にいようが、都会にいようが、受けられる教育の質は基本的に変わりません。

ところが、日本はいまだに対面式の授業にこだわっている。もちろん、対面でなければ得られないことがたくさんあるのも事実です。しかし、時間も含めて費用対効果を考えれば、もっとオンラインを使っていいはずだし、教科や授業内容によってはより効率的な学習環境が作れるのに、そうした変化に学校がついていけていないのです。

今、日本が抱えている課題は、人口の急速な減少で財政などの思い切った構造改革が必要な中、「国民が改革の痛みを覚悟できるのか」ということです。しかし、今の教育の現状を見ると、それは難しい。親も子どもたちも当事者意識を失い、うまくいかないことがあれば「先生の教え方が悪い」「環境が悪い」などと、他人に責任を押しつけるのが当たり前になってしまっているからです。