オシャレや趣味、友人とのおしゃべりを楽しめない……。それはもしかしたら認知症グレーゾーンかもしれません。早めの対策で引き返せる可能性はある、と専門医は話します(構成:野本由起 イラスト:霜田あゆ美)
記憶力より意欲の低下に要注意
年齢を重ねるにつれて物忘れが増え、「あれ、これってもしかして認知症かも……」と不安を抱いた経験はありませんか?この違和感に気づき、対処していけるかどうかが、未来の自分を決める分かれ道です。
認知症は、長い年月をかけて進行する生活習慣病の一種。認知症のなかで最も多い「アルツハイマー型認知症」は、アミロイドβというたんぱく質が脳に溜まりはじめ、3段階の過程を経て発症します。その期間は約20年です。
第1段階は、アミロイドβが脳に溜まりはじめているものの認知機能の衰えは見られず、何の問題もない状態。次が、記憶力の低下は見られても日常生活にさほど支障がない、いわゆる「認知症グレーゾーン」。そして最後は、認知症を発症し、生活に支障が出る状態です。
このように、認知症になる人は「軽度認知障害(MCI)」といわれるグレーゾーンを必ず通ります。ですが、すべての人が認知症に進行するとは限りません。なかには発症しないままの人もいますし、適切な対応によって、現状を維持するだけでなく、認知機能の低下を遅らせられる場合もあるからです。
グレーゾーンの期間は、平均7年。さらに、この時期の過ごし方次第で、4人に1人は健常な脳の状態にUターンできるとされています。