コロナウィルス対策で記者会見するベルギーのソフィー・ウィルメス首相 (c)Sophie Wilmès  
ベルギーは、死者数が6000人(4月20日時点)近く、人口100万人あたりでは世界最悪レベルとなってしまった。ただ、これは、風邪のような症状があって自宅や介護ホームで亡くなった方々を、「コロナの疑い」として広く認定しているためとのこと。むしろ、行動制限の周知・徹底で、新規感染者は漸減。その陣頭指揮を執るのは、ソフィー・ウィルメス首相だ。

女性首相が子ども番組で語り掛ける!?

今、世界中ほとんどの国で、Covid-19対策のための厳しい行動制限が行われている。何はしてもよくて、何はいけないのか、どうして友人と会ったり、高齢者を見舞ったりしてはいけないのか等々、政治家たちの独特の言葉遣いは、大人でもなかなかわかりにくい。ベルギーでは、女性首相や大臣たちが大活躍。お母さんか先生が話しかけるような、わかりやすい語り口で、子どもたちに直接説明している。

3月18日、筆者が住むベルギーでは、1時間にもわたる政府首脳による記者会見が国営テレビで放映され、重々しい雰囲気の中で、封鎖政策が説明された。

実は、2019年5月末の総選挙以来、ベルギーでは未だに組閣できていない。日本では想像もできないだろうが、いくつもの党による連立政府となるので、1年以上かかることは珍しくない。そこで、新政権ができるまでは前政権がそのまま続投することになっている。

ところが、今回だけは、ちょっと困ったことになった。というのも、前の首相が欧州連合(EU)の大統領職に抜擢されて、首相の座を降りてしまったからだ。それで、ピンチヒッターとして登場したのがソフィー・ウィルメス氏(45歳)。3月17日、Covid-19対応のための緊急臨時政府が正式に樹立し、ベルギーでは、初めての女性首相となった。

ベルギー仏語国営テレビRTBFの人気子どもニュース番組「Ouftivi Les Niouzz」で、子どもたちに説明するウィルメス首相 (c)rtbf 

突然、重い責任を負うことになったウィルメス首相だが、なかなか評判がいい。このご時世、「女性らしい」というと怒られるかもしれないが、Covid-19の感染対策のための緊急政策では、きめ細やかな配慮や思いやりある言葉に好感がもたれた。その上、小さな子ども向けのテレビのニュース番組に、他の若手女性閣僚とともに何度も登場して、子どもたちのかわいい質問に答えているのだ。

たとえば、4月6日の放送のテーマは、「封鎖(Confinement)」について。小さな女の子が、もじもじしながら、「なんで~、お友達と遊んじゃいけないの?」と尋ねた。自ら3人の子どもを育てて来たウィルメス首相は、表情たっぷりにこんなふうに答えた。

「わかるわ、お友達と遊べないのはつまんないよね。ウィルスってね、人から人に伝わっちゃうの。もし、みんなと遊んじゃったら、その中の誰かがウィルスを持っているかもしれないの。今、一番大事なことは、XXちゃんやお友達が元気でいられることなの。そのために、お家からなるべく出ないようにすることがとても大切なの。そう、つまんないね、わかる。でも、何週間かしたら、また、お外で、お友達と遊びたいだけ遊べるようになるから。だから、それまで我慢してね」

二人の若手女性閣僚は、義務教育担当大臣と児童担当大臣。「勉強が遅れちゃった分、夏休みがなくなっちゃうの?」「おばあちゃんにどうしてあげたらいいの?」「病院はパンクしているの?」と続く子どもたちの質問に、彼女らは次々と、丁寧に自分の言葉を紡ぎながら、表情豊かに、やさしく説明していくのだ。