「文化資本」と「文化資源」

趣味をめぐる社会学の考え方を代表するのは、フランスの社会学者ピエール・ブルデューとジャン=クロード・パスロンによる「文化資本」でしょう。生活環境や学校教育のなかで触れてきた「文化」を「資本」(=財産)のように身につけると、生きる上で有利になる、そんな概念です。ブルデューは、文化資本を「客体化」(モノ)、「制度化」(学歴や資格)、「身体化」(知識や能力)の3つに分けました。

彼の見方が、どこまで日本に、そして、あなたに当てはまるのか。考える価値があるでしょう。ただ、ここでは、「文化資本」よりも、狭く言えば社会学用語ではありませんが、「文化資源」ということばを取り入れたい。

『社会人1年目の社会学』(著:鈴木洋仁/クロスメディア・パブリッシング)

「資本」は貯められます。貯金したり、投資したり、売ったり買ったりもできます。「資源」はどうでしょうか。「資源ゴミ」は身近です。再利用したり、再生したりできる、そんな循環をあらわします。「資本ゴミ」はありませんし、お金持ちを示す「資本家」はあっても「資源家」はいません。「水資源」とは言いますが、「水資本」はほとんど使われません。

英語だと、もっとわかりやすい。「資本」=capitalで、「首都」や「主な」も意味します。「資源」=resourceで、re=「くりかえし」がついています。唯一無二な前者に対して、何度も使われる後者、とイメージしやすい。