食べても太らないことを指摘されて
膵臓の手術を受ける前、医師からは「術後、確実に糖尿病になります」と宣告されていました。膵臓は、血糖値をコントロールしているインスリンを分泌する臓器。それをほとんど摘出するのだから、と。とはいえ、半年もすると手術の傷跡も目立たなくなってくる。いつのまにか糖尿病のことなどすっかり忘れ、手術前と変わらない日常を過ごしていました。
ところが手術から3年ほど経ったころ、友達に「なんでこんなに大食漢なのに太らないの?」と言われて。確かに、フルコースを平らげて、ハシゴ酒をして、帰りに〆でラーメンを食べる……みたいなことをしても太らない。そればかりか痩せていく一方でした。
そういえばここのところ寝起きに激しい立ちくらみがするな、と思って、糖尿病の知り合いに「どう思う?」と尋ねてみたら、「朝のめまいは糖尿病の特徴的な症状だ」と。そこで慌てて病院へ行き、血糖値の検査を受けたら、やはり発症していました。
最初は薬で様子を見ていましたが、血糖値が十分に下がらず、インスリン注射を自分で打つことに。「そこまでやらなきゃいけないの?」と疑問を抱きましたが、そういう人は私だけじゃないんでしょうね。病院では、まず糖尿病を放っておくとどうなるかの説明を受けるんです。神経障害で足を切断した人とか、網膜症で目が見えなくなった人の症例写真を見て、事の重大さに気づきました。
8年経った今では、すっかり習慣です。毎朝、指先に針を刺して採取した血で血糖値を測り、その数値に合わせた量のインスリンを腹部に注射しています。
血糖値を測るようになってわかったのですが、人間のカラダって精密機械みたいによくできてるんですよ。前日に何を食べたか、お酒をどれくらい飲んだかが面白いくらいはっきりと血糖値に反映される。
空腹時の血糖値の基準値は年齢によって違うけど、40代の女性だと大体100mg/dL。それが前日に炭水化物をしっかり食べると130に、深夜にラーメンを食べた翌朝は160まで数値がはね上がります。
逆に何も食べずに過ごすと、60くらいに下がって低血糖になるんです。目がかすんで、このまま見えなくなってしまうのではないかと不安におののいたこともあって、健康に生きるための要は食生活なのだと思い知りました。
とはいえ、私は乱れた食生活から糖尿病になったわけではないので、高血糖の対策は炭水化物を控えめにすることくらいしか意識していません。低血糖に関してはお腹が張るのがサインだとわかってきたので、気づいたら甘いものを口に入れるようにしています。