1か月、半年……と積み重なっていくと

また、祖父の介護のために大学院を中退したCさん(インタビュー当時32歳)は、「学校でケアの話をして理解されないということと、最終的に学校から離れようということには、いくつかのステップがあるのでは?」という筆者の問いかけに対し、こう答えた。

Cさん そうですね。まず、自分が「学校」と言われるところのルールから逸脱していくのが、自分の中で耐えられなくなってくる。

筆者 たとえばどういうルール?

Cさん 遅刻をしてしまうとか、欠席をしてしまうとか。大学院の場合だと、1か月後のいついつに発表しなさいというのがわかっていて、準備はするけれども、介護でうまく準備ができなかったりとか、直前に介護で予定が変更になったりとかで「発表順番をずらして下さい」とか。そういうお願いをしていくのも、最初は「仕方ないよね」。だけども、そのうち、「またか」で、「いい加減にしろ!」となっていくので。

筆者 あぁ。

Cさん やっぱり、学校って、大学も含め、朝来て、1時間目2時間目3時間目っていう決まった時間があって、一定の成績を収めて次に進んでいくルールじゃないですか。まず、欠席をする、遅刻をする、という段階で、評価が悪い。でも、それをなんとかするために頑張ると、かえってしんどくなる。その現状自体もしんどいし、でもどうにもできないし、みたいな。そういう負のループっていうか。(中略)

筆者 自分の中でなんとかしなくちゃと思って取る手段のプロセスがあるじゃないですか。Cさんの場合はどうだったんですか?

Cさん 私、徹夜とか、長い時間起きていたりするのって、すごい苦手なんですけれども、それをやらざるを得ないです。介護とかでしんどくなって、本来であれば寝たいところを、1時間でもいいから起きて作業すると。でもそれが、1か月、半年……と積み重なっていくと、しんどさが出てきますし、どこかで大きな破綻をきたすということですね。

筆者 それはどういう破綻ですか?

Cさん それは、学校に行くという行為自体に疲れていくというか。結局、それだけ頑張っても、自転車操業なので、とりあえずこの課題をこなす、とりあえずこの課題をこなす、なので、もしかしたら学校の授業の単位とか取れていくかもしれないですけれども、最終的に卒業に必要な論文を書くという行為とかにはまわらない。

だから、どれだけ頑張っても、自分が学校の中で決められたゴールというものに到達していくようなビジョンが見えないですし、そのための手段もないというか。まわりに相談しても、いい反応は返ってこない。むしろ孤立していくという。じゃあ、どうすればいいんでしょう? という。