退団後に『エリザベート』出演
思いもかけなかった三度目の『エリザベート』は退団後にやってきました。
『エリザベート TAKARAZUKA20周年 スペシャル・ガラ・コンサート』への出演にお声を掛けていただきました。
懐かしい仲間と『エリザベート』の世界との再会は、一瞬にして時を戻しましたが、OGとして立つ舞台は不思議な感覚でもありました。
今回もエリザベートの父親マックス役として出演しました。
通称「シシィのパパ」です。
衣裳は役に合ったものを自分で用意するということで、「黒い服」という指定でした。
私の出演日の前日、もう他の組の公演が始まっていて、その日は花組公演でした。
観劇に行き、幕が開いた瞬間、私は固まりました。
え……⁉
皆さん指定の「黒い服」を着ていました。
黒は黒でもキラキラした装飾のついた「黒い服」を。
ヤバい!
ここは宝塚だった!
そう、黒と言っても宝塚の黒はただの黒ではなかったのです。
ラインストーンやスパンコールが輝く、ゴージャスな黒。
私はキラキラのキの字もない指定通りの真っ黒い服を用意していました。
どうしよう…地味すぎる。
何かキラキラを探さないと!
本番前日、梅田の街を走り回ってキラキラしたものを探しました。
ようやく長いラインストーンを見つけ、裁縫が得意なマネージャーと夜なべして制作。
何とか本番には間に合うという綱渡りでした。
歴代の豪華なキャストの皆様と一緒に舞台に立たせてもらった幸せな公演の思い出とともに、梅田をキラキラを求めて走り回った思い出が蘇ります。
そしてさらに5年後。
またお声を掛けていただきました。
『エリザベート TAKARAZUKA25周年 スペシャル・ガラ・コンサート』
今回もシシィのパパ、そして指定はやはり「黒い服」です。
二度目ともなれば、もうわかっています。
同じ失敗をしない為にも気合を入れて準備をしました。
さぁ、どうだ!と着てみたところ、
「越乃さん、派手過ぎます……」
前日の夜、大至急キラキラを外す、ということがありました。
「黒い服」問題、二連敗です。
