「ミナトくん、鮎美のこと……よろしく頼む」と振り絞るように話し始めます。
「鮎美の手料理、おいしく食べてあげてほしい。おいしいから」
「それから、食器用洗剤は植物性ね。鮎美は安いのでいいって言うけど、ホントは手が荒れやすいから」
「それから、トイレットペーパーはダブルね。鮎美はシングルでいいって言うけどホントはダブルが好きだから」
「それから、時々高いアイス買ってあげて。ラクトアイスじゃなくてアイスミルクじゃなくてアイスクリームね。ちゃんとアイスクリームって書いてあるやつ」
と続け、最後に「俺が鮎美にできなかったこと、しなかったこと、思いもつかなかったこと、たくさんしてあげてほしい。鮎美のこと任した」とミナトに伝える。
「勝男さん、大丈夫です。鮎ちゃんは誰かに任せなくても大丈夫。だって強いですから。僕らよりずっと」と返すミナト。
その言葉を受けた勝男は「いいやつだ。何か悔しいな」とミナトを認めた様子を見せるのでした。