「嫌悪の報復性」という関係性

上司は、従順で自分の意見に対して否定しない部下を「信頼できる」と感じることがあり、その結果えこひいきが生まれることがあります。

これは、職場での安定(地位の安定など)を求める心理が働いているためで、Dさんの場合は、仕事ぶりが皆から評価されている小沢さんに対して、自分の地位が脅かされる危機感を抱いた可能性があります。それが「小沢さんを外し、従順なEさんを重用する」というえこひいきを生んだことと関係しているように思えます。

(写真提供:Photo AC)

今回のケースでは、双方の心理的背景についても着目する必要があります。小沢さんとDさんは、心理学的には「嫌悪の報復性」という関係性にあるようです。

皆さんにも経験があると思いますが、人間関係において、自分が“苦手”と思う相手に、いつの間にかネガティブな感情が伝わっていて気まずい関係になることがあります。そうすると、自分が苦手意識を抱いている相手が、自分に対して同じようにネガティブな感情を抱くことになります。その逆パターンとして、自分が好意を持つと、相手も好意を持ってくれる「好意の返報性」という関係性が生まれることもあります。