管理職になってから「生きづらさ」を感じた
彼女の会社では、管理職になると部下との1on1ミーティング(定期的に行う1対1の面談のこと)が重要な仕事のひとつとなります。このミーティングでは、部下の側から話を丁寧に聞くことをベースとする綿密なコミュニケーションが行われ、研究所内の意思疎通が図られます。
しかし、彼女の部下から様子を聴くと、高山さんの場合は綿密なコミュニケーションとは言いがたいようです。
高山さんは最初に「なにか(話)ある?」と不機嫌そうに早口で聞くため、部下が「特にありません……」と答えると、本当にその会話だけで終わることもあります。また、「もう少し早く仕事できないの?」とか「簡単なことしかお願いしていないはずだけど」など、パワハラと捉えられかねない言葉を、次々と部下に向けることもあるようです。一方、高山さんの専門分野である酵母などの話になると、終業時刻が過ぎていても話が止まらなくなることもあり、ある部下は3時間近くもひたすら話を聞かされたということです。
このように、高山さんが筆者に相談に来た背景には、「彼女が部下とうまく人間関係がつくれず、それが仕事にも影響していた」という状況がありました。彼女は、管理職になってから感じるようになった「生きづらさ」の原因を自分なりにいろいろと調べていくうちに、「自分は発達障害ではないか」と疑いを持ちました。それで、相談に来る前に、すでに精神科を受診していました。
