海岸沿いにある花見潟墓地

私たちは近くに車を停めて、墓地まで歩く。するとすぐに、見渡す限り灰色の墓の群が現れた。人力車で通り過ぎるのに15分かかると八雲は書いたが、それは本当のことに思えるほどだった。

海岸のすぐ際に立ち並ぶ墓、墓、墓。高台の上から見えるのは、一面、墓なのである。ちょっと信じられない光景が目の前に広がる。2万基以上あるという花見潟墓地は、2万平方メートルの広さがあり、自然にできた海岸沿いの墓地としては日本最大級と言われる。

よく見ると、風雨にさらされ黒くなった墓や、崩れかけた墓もあり、それらは1ヶ所にまとめられていた。中世以降の墓地というから、もしかしたらすでに墓守する人もいなくなっているのかもしれなかった。

ただ、なんというか、とても清々しいのである。墓地特有の暗さは微塵もない。海風が吹きわたり、どの墓も光に照らされてキラキラと少し嬉しそうにしている気がした。

(写真提供:Photo AC)

こんな場所で眠れるなんて、羨ましい。私もできることなら、海が見える場所に埋葬されたいと強く思った。ここなら残された人たちも、墓地に来ることが楽しくなるのではないだろうか。

眠る人は多くが海と共に生きた人たちなのだと思うが、どこまでも続く墓を見ながら、心底、いいなあと思ったのである。