(写真提供:Photo AC)
連続テレビ小説『ばけばけ』(NHK総合)。朝ドラ通算113作目となる同作は、明治時代の松江を舞台に『怪談』で知られる小泉八雲の妻、セツをモデルにした物語。ヒロインの松野トキ役を高石(高ははしごだか)あかりさん、夫で小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)をモデルにしたレフカダ・ヘブン役をトミー・バストウさんが演じ、怪談を愛する夫婦の何気ない日常が描かれます。史実では来日後、記者の仕事を捨てて40歳で松江の英語教師となり、執筆活動を続けた八雲ですが、なぜ彼はそこまで日本に惹かれたのでしょうか?『八雲とセツを追いかけて-神様と妖怪に出会う旅-松江・境港・出雲』の著者で文筆家の譽田亜紀子さんが謎に迫ります。

八雲とセツが訪ねた境港の琴浦町

明治24年(1891)8月、日本海を舟で旅した八雲とセツは、境港の東にある琴浦町を訪ねた。新婚当時の二人の旅をなぞるように、私も米子インターチェンジから一路、琴浦町を目指す。

琴の浦インターチェンジで、まずは腹ごしらえをすることにした。事前に観光協会の方から「道の駅琴の浦で美味しい海鮮丼が食べられますから」と聞いていたのである。それは是非とも食べなければなるまい。道の駅に着くと一目散にフードコートへ向かう。地元の水産会社が運営しているお店らしく、地魚を使った海鮮丼やエビフライなどが食べられるという。周りを見ると地元の人も利用しているようだ。お米は琴浦町産を使っているとかで、地元の食材オンパレードというだけで、来てよかったと思ってしまう。

私が注文した海鮮丼は店イチ推しのもの。数種類の地魚が、どんぶりからはみ出すほどびっしりとのせられ、中央にこれでもかとカニが置かれていた。「これはすごいものがきた!」と、見ただけで幸福感が私を包む。

一口食べる。目を見開く。新鮮さが口の中で爆発する。コリッと身のしまった刺身の食感と美味しさが噛むほどに溢れ出す。味はもちろんだが、もう一つ嬉しいのは、東京でこの価格設定は絶対にあり得ないということ。この場所でないと味わえない体験に、しみじみ来てよかったなあと思いながら、海鮮丼をたいらげた。