患者急増に対処するために
ブラジルで最初に感染が確認されたのは2月26日頃。2月にイタリアのロンバルディア州に出張していた61歳のサンパウロ在住の男性ということになっている。しかし、4月になって、「本当は1月から感染者がいた」という動画が流出し、データも疑問視されるようになっている。
日本のお辞儀に相当するブラジルのあいさつは、頬をチュッチュと合わせるハグが定番。濃厚接触のオンパレードである。だから私の周りの日系人は「きっとブラジルはイタリアやスペインなど同じく、感染爆発するだろう」と口々に予測する。
さらにPCR検査そのものの数が少ないブラジル。貧富の差が激しいうえ、皆保険はないため、お金持ちの人たちは自腹で有料の病院へ検査に行くが、貧しい人たち専用の無料病院には検査キットも人手も間に合っていないのが現状。そのため、どれほどの感染者・死者数がいるのか定かではない。
私が心配しているのは、アマゾンの先住民族コカマ族の20歳の女性がコロナウイルスに感染したという事実だ。すでにこの女性を含めた3人に感染が見られ、隔離措置が取られているが、先住民族は森の中で生活し、免疫力が低いとされているだけに、外界からのウイルスの流入に弱い。その後、先住民以外の一般のブラジル人を含め、アマゾン地方での爆発的感染が起こってしまった。
患者急増に対処するために作られた急ごしらえの野外病院はなんと、サンパウロ市中心地にある伝統のサッカー場・パカエンブー競技場だ。
W杯ブラジル大会が開催された2014年までは、名門サッカーチーム・コリンチャンスのメインスタジアムだった。また、日系ブラジル人にとっては、ブラジル日本移民70周年と 80周年に記念式典が行われた場所でもある。そんな競技場のド真ん中、普段は選手がサッカーボールを追いかける、まさにそのグラウンドに白い病院テントが張られている。さすがサッカーの国!と、変なところで感心してしまった。