信じられない光景

ある者は頭のてっぺんから毛深い腕を生やしていた。

またある者は顔の真ん中にぽっかりと穴が穿たれ、向こう側がのぞき見えた。

『こどもの頃のこわい話 きみのわるい話』(著:蛙坂須美/竹書房)

蜘蛛みたいに長い両腕を床に垂らした人がいる。目ひとつの人がいる。人体模型のように全身の血管と内臓を晒した人がいる。後頭部に別の顔がある人がいる。鼻のかわりに陰茎を生やした人がいる。

およそ信じられない光景である。

しかしそのときの光彦さんは、別段、その人たちのことをこわいとも思わなかった。

ただ顔面に陰茎を生やした人のことはさすがにかなりおもしろく、ツボに入ってしまい、友人と二人くすくすと笑い合った記憶がある。