友人の顔色が変わり…
友人からはたまに、
「昨日の夕飯はハナで食べたよ」
と聞かされた。全くうらやましくはなかった。光彦さんの家には行きつけの焼き肉屋があり、そちらのほうが断然味がよかったのだ。
後年、そんな変な焼き肉屋に行ったことがあるよね? と友人に訊ねたところ、夢でも見たんだろう、と笑われた。
けれど話が「鼻のかわりに陰茎を生やした人」のくだりに及んだ瞬間、友人の顔色がサッと変わった。
「実は昔から、そんな人が出てくる夢をよく見るんだよ」
友人の話によるとそれは、「鼻のかわりに陰茎を生やした人」に強制されて、「蒲焼きにする前の開いたうなぎ」みたいなものをいやいや食べさせられる夢なのだとか。
絶句する光彦さんを前に、苦虫を噛みつぶしたような表情を浮かべた友人は、
「いま気づいたけど、夢に出てくるその人、おまえに雰囲気が似ている気がするな……」
それだけ言って黙りこくってしまったそうだ。
※本稿は、『こどもの頃のこわい話 きみのわるい話』(竹書房)の一部を再編集したものです。
『こどもの頃のこわい話 きみのわるい話』(著:蛙坂須美/竹書房)
幼少期に目撃した奇妙な光景、いま思い出してもぞっとする体験。
それぞれが己の胸にあれは何かの勘違いか夢であったと封印してきた記憶を静かに呼び覚まし、丹念に聴き集めた怪異取材録。





