私も同様の失敗をしたことが…

…と偉そうに書いている私も、実は同様の失敗をしたことがあります。

ある会社の社長と新入社員、そして私の3人で会った時のことです。

『なぜ、あなたの話し方は誤解されるのか~意図を正しく伝えるためのメタ認知』(著:三宮真智子/大和書房)

新入社員の女性について、社長が次のように言いました。「実は、彼女、ちょっとしょげてるんです。というのも、今朝、コーヒーをコンピュータのキーボードの上にひっくり返してしまって、大変なことになったんです」

私はそれを聞いて思わず、「まぁ! 気をつけないとね」と言いました。

それは、自分も同じことをしそうだと思ったからです。つまり、「私も気をつけないとね」という意味でした。

ところが、うっかり主語を省いたために、新入社員の女性は自分の不注意を非難されたと思ったのです。

そして、「あなた、気をつけないとね」と言われたと受け取ったのです。彼女は私に向かって「どうもすみません」と謝りました。

その一言で、私は彼女に誤解を与えてしまったと気づき、慌てて次のように言いました。

「あ、違うんです。私も気をつけないと、という意味だったんです。紛らわしい言い方をして、ごめんなさい」彼女は笑顔になってくれて、私も、ほっとしました。

この時、もし彼女が黙っていたなら、彼女も私も誤解が生じていることに気づかなかったでしょう。そして私は、上司でもないのに彼女にダメ出しをする嫌な人間と見られたかもしれません。