マスタリングの変化
こういった環境の変化は、音楽のつくり方や好まれる楽曲のトレンドに当然変化を及ぼしていますが、良い曲づくりのための基本的なセオリーは変わっていません。
ただ一方で、もうひとつ注目しておきたいのが、マスタリングの変化です。マスタリングとは音楽制作における仕上げの工程で、ミックスダウン(複数の楽器やボーカルなどが録音された録音トラックを左右2チャンネルのステレオ音源にまとめていくこと)された音源が、メディアごとにベストな状態で再生されるように調整をおこないます。Spotifyもそうですし、TikTokなどもスマホで利用されることが圧倒的に多いサービスです。
つまり、スマートフォンの内蔵スピーカーやiPhoneであればAirPodsのようなワイヤレスイヤホンで楽曲を聴く機会が増えているのです。
かつてのラジカセやオーディオコンポとは求められる音圧、音色は異なりますので、マスタリングの方向性は大きく変化しています。イヤホンで聴くシーンを重視すれば、やはり低音(低い周波数)をカバーしようという方向になってきていますし、ストリーミング配信用の音源は、データ容量を圧縮する必要がありますので、CDよりも用いることができる音の幅(周波数帯)が狭くなる傾向にあります。
そういった制約のなかでも、どの周波数帯を強調すればより快適な音楽体験を提供できるのか、というテクニックが進化してきているのです。