(写真提供:Photo AC)
近年、YOASOBIやAdoに代表されるように、J-POPが世界的な注目を集めています。「この動きを支えているのは、ストリーミングサービスやYouTube、SNSやショート動画、そしてそれらに組み込まれたアルゴリズムの力です」と語るのは、長年音楽業界に長く携わってきたParadeAll株式会社代表取締役の鈴木貴歩さんです。そこで今回は、鈴木さんの著書『音楽ビジネス』から一部を抜粋し、音楽ビジネスについてご紹介します。

ストリーミングサービスの影響で音楽制作は変化したか?

音楽配信サービスの普及は、音楽のつくり方にも大きな影響を与えています。

まず最も大きな変化は、イントロの長さです。聴き放題のストリーミングサービスではどんどん曲をスキップすることができますから、そうされないように全体にイントロを短くして、サビを早く聴かせる傾向になっています。

多くのストリーミングサービスでは再生回数としてカウントされるには、少なくとも30秒は再生される必要があります。それ以下だとスキップされたと見做され再生回数としてはカウントされず、ロイヤリティも支払われません。

イントロは極力短くして、早くサビを聴いてもらい、短いスパンで曲調が変化しながら再びサビに入っていくことで、とにかくスキップされずに最後まで楽曲を聴いてもらうことを目指す傾向が強まっているのです。

最後まで聴いてもらうことで、配信サービス内でのその曲の評価が上がり、他の曲との関連性によって、おすすめとして推奨される確率が高くなるからと考えられます。

かつては、日本の場合5分以上の長さがあると2曲分の著作権料が入るというルールがあり、加えて曲のなかで起承転結のような物語性を表現するために比較的長い曲が多くありました。ところが、ストリーミングサービスの場合、楽曲が長いとスキップされてしまう可能性が上がってしまいますので、3分前後にコンパクトになる傾向も出てきています。