古新聞もかなりの量が取ってありますね。全国紙だけでなく、各地の地方紙まで目を通していましたから。おかしかったのが、私の昔のブロマイドやカレンダー、表紙を飾った雑誌や記事の切り抜きまでコレクションしてくれていたことです。

体調が戻ったとはいえ、この書庫を私一人で整理する気力はとても湧かなくて、途方に暮れていました。そんな折、新聞社にわが家の書庫を取材していただくことに。記事が掲載されると、国やNHKから、「資料の調査をしたい」と申し出がありました。

私だけでなく、今は蔵書や資料の処分に悩んでいるご家族は多いのですって。遺された資料は貴重なものでも、それを収容できる公的な場所が少ない。「調査が終わるまでは絶対に捨てないでください!」と担当者から強く言われてしまいました。それまで、私は生きていられるでしょうか。

 

自信をくれた一枚の着物

夫は多趣味だったので、ゴルフの道具もあります。なかでもカメラの機材や、撮った写真を収めたアルバムが多いですね。毎年「世界らん展」の会場で写真を撮るのを楽しみにしていました。私が選んだ写真でカレンダーを作り、みなさんにお分けしていた時期もあります。自慢になりますが、よくできていたんですよ。

ありがたいことに、夫の洋服は引き取り先がすぐに見つかりました。舞台演出家の方が、「衣装として使わせてほしい」と、50着ほどの背広をもらってくださったのです。自分の服が舞台上で生き続けてくれたら、夫もどんなに喜ぶか。きっと役者さんに、掛け声をかけることでしょう。

人が一人亡くなると、本当に多くの物が残るのですね。将来子どもたちにかける負担を考えると、私自身が持っている物も、思い切って整理を、と思ったりもします。

出演した作品の台本は、お風呂やベッドにまで持ち込んで必死で覚えた思い出のあるものですから、私の手で処分することはやっぱりできなくて……。撮影所でスクリプターをしていた人に、「司さん、貴重な資料なんだから、絶対に捨てないでね!」と釘を刺されていますし(笑)。お洋服や着物は、夫の物と同じように、舞台やドラマの衣装として、いつか役立てていただけるかもしれませんね。