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葬儀は近親者10人まで、結婚式5人まで

21日からは、スーパーマーケットでのマスクの着用が義務づけられた。スーパーに入る前に無料のマスクが配布されている。対応が遅いように感じられるかもしれないが、オーストリアは、「覆面禁止法」(2017年10月施行)により、公共の場で顔を認識できない程度に覆うことが禁止されている国だ。ブルカ(イスラム諸国の女性の着用するヴェール)やマスクの使用はNG。その国で、マスクが義務づけられることになったのは、いかに緊急事態であったのかが察せられる。

そして4月1日には「屋内集会禁止法」が制定され、葬儀は近親者10人まで、結婚式5人までの参加に制限された。違反者には、1450ユーロ(約16万円)の罰金もしくは最高4週間の自由刑(強制的に収容し、個人の自由を剥奪する刑罰)が科される。

上記のような厳しい措置は、34歳のセバスチャン・クルツ首相の下行われている。クルツ首相は毎日のように動画で国民に呼びかけ、「つらい現状だが、〈オーストリアチーム〉で見えない敵から身を守るのが大切だ」、「祖父母を助けるためにも、面会は当分控えることが重要」など力説している。

なお、テレワークで外出しなくなった結果、離婚率が確実に上昇しているという悲報も耳にする。配偶者やパートナーが一日中パジャマ姿で過ごし、シャワーも浴びず、どんどん汚くなるからだとか、不安な心境を相手にぶつけてしまうため摩擦が起きやすいからだとか……。

そんな過酷な生活に彩りをもたせようと、「Flashmob-Gig」というバルコニーでのコンサートが企画されている。毎週、ソーシャルメディアを通して課題曲が出され、日曜日の18時に各自が楽器を持って、バルコニーに集まり演奏する。誰でも参加でき、歌う人、電子ピアノで演奏する人、サックスを吹き鳴らす人などさまざま。

ある日の課題曲は、ベートーヴェンの交響曲第9番「歓喜の歌」、EU欧州連合賛歌だった。弾くほうにも聴くほうにもストレス発散になるとあって、毎週日曜日を楽しみにしている人がたくさんいる。

上記のような封じ込め措置の成果か、感染者の増加ペースが鈍化。クルツ首相は4月14日から、欧州では初めて、制限措置の緩和を行うと発表した。早期のうちから厳しい措置を行った成果であるとして、国民の間では誇らしい話題となっていた。