「バスティー」という愛称で親しまれているセバスチャン・クルツ首相は、毎日のように動画で国民を勇気づけている。© ÖVP.Wien
新型コロナウィルス対策で、厳しい外出制限を設けていた国々が、ここにきて規制を緩和しはじめている。ヨーロッパで最も早く、4月14日に緩和措置を講じたオーストリアでは、どのような2か月間を過ごしてきたのだろうか。(文=パッハー眞理)

違反者には3600ユーロ以下の罰金

オーストリアで新型コロナウィルスの感染者が最初に確認されたのは、2月25日インスブルック市に居住するイタリア・ロンバルディア州出身のイタリア人だった。その後、連邦保健省は、3月1日にコロナウィルス(以下COVID-19)の感染者が14名いることを明らかにした。その内訳は、ドイツ人観光客が2名、あとはイタリア旅行からの帰国者だと判明している。

そして3月10日、国内の感染者が180人を超えた段階で、外務省は、ヨーロッパ最大の感染者が発生していた隣国のイタリア全土を「危険レベル6」とした。感染拡大を危惧して、イタリアからの入国を禁止。空と鉄道の旅客便を停止し、国境では全ての車両がチェックを受けることになった。なお、国内で感染者が出る以前から、オーストリア航空は中国本土便の運航を停止し、イランに対して「渡航中止・非難」(危険レベル5)を出している。

さらに、イタリア滞在中のオーストリア人は即刻引き揚げ、14日間の自宅待機が義務づけられた。感染拡大国との国境を閉鎖したのは非常に早い決定だったものの、国境を接するチロル地方では、多くのスキー客が行き来し、国内では一番感染者の多い州となった。

大学は休講、ビジネスはできる限り在宅ワークに移行。3月11日から4月末まで、参加者500名超の野外のイベント、100名超の屋内の行事は中止とした。これは法的拘束力を持つ禁止措置だ。ところが、中止に対して国からの補償はない。

15日には厳しい外出制限が発表された。散歩や日用品の買い出し、病院の通院などは認められているものの、不要不急の外出は禁止に。散歩は同居者2人までと定められた。取り締まりのためにパトカーが巡回して、違反者には3600ユーロ(約42万円)以下の罰金。

カフェやレストランをはじめ、日用品以外の店舗は完全に閉鎖され、休業に応じない経営者は3万ユーロ(約351万円)以下の罰金が科された。閉鎖に対して国からの補償は、当事者でないとわからないほど、かなり複雑だ。毎月補償が出るのか、1回限りなのかは労務省や保険会社に問い合わせることになっている。