やなせさんの本当のやさしさ
少し話が逸れますが、ひとつだけやなせさんの話をさせてください。
やなせさんが『アンパンマン』で描いた「逆転しない正義」には、見返りを求めないからこそ、何にも左右されない強さがあります。
やなせさんはとてもやさしい人でしたが、無限に「やさしさ」を与え続けるようなことはしませんでした。東日本大震災の後、津波でも倒れずに残った“奇跡の一本松”のために寄付をお願いされた際、「これは自分が一人で助けてはダメだ」と断ったそうです。「自分一人で助けてしまうのではなく、みんなで助けないといけない」と。
すぐに寄付できたはずですが、「みんなが助け合う気持ちを起こさなければ意味がない」と考えるのがやなせさんの本当のやさしさでした。手間もかかるでしょうし、いろんな意見が出て衝突するかもしれません。それでも「震災復興の象徴はみんなの手で」と促したのは、東北の方々のことを本気で思ったからでしょう。