妻と戦って勝てる確率は……
中村 石破さんといえば永田町一の愛妻家という話も聞きました。
石破 それは嘘です。(笑)
中村 地元の支援者をまとめているのは妻の佳子さんだとか。馴れ初めや2人の娘さんについても教えていただけませんか。
石破 妻は大学の同級生で、同じ講義を受けていた仲間。私の高校は男子校で、男女交際とは無縁でした。やがて大学に入り、三田のキャンパスで妻が図書館から本を小脇に抱えて階段を降りてくるのを見て、こんなきれいな女性が世の中にいたんだと。まあ一目惚れです。(笑)
中村 どうやって接近されたんですか?
石破 なんとか彼女の関心を引こうと思って、試験の山掛け講座をしたり、気に入られたい一心でやっていました。
中村 奥さまの石破さんへの第一印象はどうだったんですか?
石破 なんか変な人、みたいな。感じ悪い、そう言っていましたね。在学中からアプローチしていたんですけど、大学の卒業式のときに満を持して求婚したんです。
中村 どうなったんですか?
石破 あっさり断られまして、生きる希望を失いました。それでしょうがないから銀行の仕事に励んだわけです。すると父が死んだ。当時丸紅に勤めていた妻が弔電を送ってくれて、それがきっかけで交際が始まりました。彼女は「こんなはずじゃなかった」と思っているでしょうが、政治家の妻になるはめになった。彼女は幼稚園から大学まで東京暮らしで、鳥取へ来た当初は、言葉はわからないし、友達もいない。
中村 それはつらかったでしょうね。
石破 まあ、よく辛抱してくれましたね。当選回数が増えて、私が大臣や党役員になり、選挙区に帰れなくなると、私の代わりに彼女が選挙カーに乗るように。でも、もともと彼女は人前に出て話したりするのが嫌いだし、華やかなことは大嫌い。あるとき私が「(選挙カーに乗らなくても)落選はないんじゃないか」と口を滑らせたことがあって、そのときは、「あなたが帰らないのに、私が選挙カーに乗らなくてどうするんですか!」と無茶苦茶叱られました。
中村 地元では、石破さんよりも佳子さんのほうが人気があると聞きました。
石破 本当にそう。今は私が帰らないほうが、票がもらえるという話もあるくらい。(笑)
中村 普段、感謝の言葉をかけていますか。
石破 彼女が地元にいるときは、どんなときでも、1日1回は電話で話しています。なるべく、「ありがとう」とか、「すまないね」とか、伝えようと思うんですけど、言い方を間違えると大変なことになる(笑)。「心がこもっていない」と怒られたり。「ご苦労さん」なんて言ってしまったときは、「そんな上からの物言いをするもんじゃありません」とか。私は防衛大臣経験があり、安全保障は専門ですが、負ける戦はしてはいけません。妻と戦って勝てる確率は100%ありません。(笑)
中村 全面降伏ですね。
石破 それはやっぱり、家庭内紛争はないほうがいいですから。