若くしてがんを患ったある女性は……

鈴木 「生きているだけでいい」という発想は、シンプルの極みですね。人一人の存在というのは大きなものです。人が一人亡くなると家族間のさまざまなバランスが崩れてしまいます。

先日、私が看取りを行った女性は若くしてがんを患い、乳飲み子を残して先立つことが悲しいと周囲の人に語っていたそうです。けれども最期には声にならない声で夫と子どもの名前を呼び、「ありがとう」と微笑みかけて静かに息を引きとりました。

『最良の人生を生きる法則』(著:江原啓之、鈴木秀子/ビジネス社)

江原 死を受け入れることができてよかったですね。

鈴木 はい。でも残された家族にとって、この若いお母さんの存在がどれだけ大きなものだったか。贅沢になんか暮らせなくてもいい、ときには喧嘩をしてもいい、ただ生きていてさえくれればよかったと周囲の誰もが思います。

江原 何もできなくても、生きているだけで周囲の人たちを照らすことができる。一人ひとりの存在は本当に大きなものだと思います。

鈴木 そもそも何もできない人なんていないのです。誰だって年を重ねればできないことが増えていきますけれど、笑顔で周囲の人たちを癒すことはできます。たとえ寝たきりになっても周囲の人たちの幸せを祈ることができるのです。私も年をとりましたけれど、死の直前まで世界平和を祈ることができるということが心の支えとなっています。