人生に良いも悪いもない

江原 そうですね。私たちができることは、働くことや自立して生きることばかりではありませんね。命の前では、出世することや財産を残すことなど些末なことだと言えるでしょう。

鈴木 地位や名誉や財産は持って死ねないのだと考えれば、ほどほどでいいかなという気持ちになるのではないでしょうか? ある程度、年を重ねれば気づくはずです。

江原 でも、老人ホームの中で「元**会社役員」などと記された名刺を配る人がいるのですよ。

江原啓之
写真:鈴木慶子

鈴木 それは本当ですか?

江原 帰属意識が高く、過去の地位がアイデンティティのすべてだという人が少なからずいるのは確かなことです。

鈴木 心をシンプル化したほうがいいのは現役世代の人たちばかりではないということですね。

江原 どうやらそのようです。

鈴木 心をシンプル化して、どんな人も結局のところ死という終着点に向かっているのだと思えば、誰の人生も五十歩百歩。人生に良いも悪いもないと達観することができるでしょう。

江原 人生は短いですしね。

鈴木 人生100年時代と聞くと長いように感じますけれど、時間というのは体感によって異なるのです。つまらない会議だと1時間がとてつもなく長く感じられますが、同じ1時間でも楽しい時間はあっという間に過ぎてしまいます。