想像を絶する黒人差別

16世紀から19世紀までアフリカからアメリカへ約1200万人の人々が、「奴隷」として売買するために捕らわれて船で運ばれたという。この物語の最初の主人公、クンタ・キンテが捕らわれたのは、彼が成人への通過儀礼を経た17歳当時だから1767年。18世紀半ばは「大西洋奴隷貿易」が隆盛を極めた時期だったようだ。

『ROOTS』における白人たちの差別と、黒人に対する扱いの酷さは、想像を絶する。白人にとって黒人は、「人の形をした家畜」だったのだろう。アフリカからアメリカへと渡る船の底に鎖でつながれて詰め込まれる黒人たちには、ベッドも毛布もない。トイレさえなく糞尿は垂れ流し。わずかな水と食物だけ与えられ、体力を落とさないため時々運動を強要される以外は、同じ姿勢で寝たまま。洋上で命を落とすものも多く、死ぬと海に放り込まれた。アメリカにたどり着いた頃、ほとんどの黒人たちには「褥瘡(床ずれ)」ができていた。傷口をタールで覆い隠され、奴隷市場で競りにかけられる様は、悲惨そのものだ。

クンタ・キンテはその頑強な肉体と若さを評価されてレイノルズ農場主に買われ、クンタが心を寄せる女性ファンタは別の農場に買われていく。

奴隷として農場で働き始めてからも、クンタは「トビー」というアメリカ的な名前を受け入れない。アッラーに捧げられた名前を失うことは、誇りを奪われることだったのだろう。肉がそげるほどの激しいむち打ちの刑に処され、遂に新しい名前を受け入れるが、クンタは心までは隷従しない。数回の逃亡とむち打ちの後、思いを寄せるファンタに会うため、極寒の季節に再び逃亡。ファンタに「一緒に逃げよう」と迫る。

しかしファンタは受け入れない。「私には旦那様の手がついているの。いつか生まれてくる子は混血でなきゃいけない。だからあなたとは関係できないし…それに…逃げてどうなるの?逃げる場所なんてない。殺されるだけよ。それより私はここで生きていく。私は決して『死なない』ってきめたんだもの!」

このファンタの「処世術」を、責めることはできない。まさにその通りだからだ。クンタが理想主義者なら、ファンタは現実主義者だ。クンタはこの口論の最中に見つかり、逃亡するものの、降ってきた雪による足跡で見つかり、なんと右足の指を斧で切り落とされる。