二つの大阪
喧騒に満ちた成り上がりたちの大阪と伝統的な上流階級の大阪。両作品では、同じ大阪を扱いながら、対照的な世界が描かれている。
主人公のモデルに則して言えば、笠置シヅ子が大大阪成立以後に青春期を送った一方、広岡浅子は大大阪時代を目前に控えた1919年に生涯を閉じている。すなわち、時代の主役たる彼女たちの人生に象徴されるように、大大阪をはさんで全く異なる二つの大阪が存在したのである。
二つの大阪を分けるのは時間だけではない。空間的にも微妙な隔たりがある。
大大阪成立以前、大阪市は今よりずっと小さかった。道頓堀やミナミなどと呼ばれ、現在の大阪を代表すると考えられている地域は市政開始当初、市内と市外の境界付近、すなわち辺境に位置しており、大阪を代表する場所ではありえなかったはずである。