人の心理は書いても書いても描き切れないほど繊細で揺れやすい

『月夜の森の梟』の連載を終えてから、本当に少しずつ少しずつ構想を積み重ねましたが、準備には凄まじいほど時間がかかりました。

でも、彩和と俊輔と野々宮の人物造形が決まると、とたんに物語が転がり始めてくれました。主要な登場人物は3人しかいないのに、こんなに長い物語になってしまったのは、一人ひとりの心理をしっかりと描きこもうとしたからです。

人間の心理というのは書いても書いても描き切れないくらい繊細で揺れやすく、つまりつかみどころがないものだということを執筆しながら痛感しました。

人には自覚していない心の動きが無数にあります。言葉にできない深層心理こそが現実だったりもする。複雑な精神をもつ私たち人間の危うさ、愚かさ、不思議さを感じながら読んでいただけたら嬉しいです。

『月夜の森の梟』書影
月夜の森の梟』(著:小池 真理子/朝日新聞出版)