この延命治療を語る上で、忘れられないエピソードがあります。

90歳を超えた女性患者さんでした。退院を控えていたんですが、朝食を持っていったときに呼吸が止まっているところを発見しました。カルテを見るとすべての延命治療を望みます、とあります。

あぁ……と思いながら、心電図モニターをつけ、酸素マスクをつけます。心電図モニターの波形はフラット、心停止を意味します。

ここで、後輩の男性看護師が心臓マッサージを始めるのですが、ひとつめの圧迫でボキっと音がしました。高齢で骨粗鬆症の進んだ患者さんの肋骨が折れた音。

ただ、それで心臓マッサージをやめることはできません。だって、積極的な治療を、そして延命を希望しているのですから。我々は肋骨の先の心臓を圧迫し全力で蘇生処置をしなくてはならないのです。

 

『人生の終わり方を考えよう 現役看護師が伝える老いと死のプロセス』(著:高島亜沙美/KADOKAWA)