椿鬼奴さん(右)と、平野ノラさん(左)(撮影:大河内禎)
モノを溜め込んでしまいがちな椿鬼奴さんと、断捨離が習慣になっている平野ノラさん。2人の“捨てる”と“残す”の線引きはどこにあるか、語り合いました(構成=篠藤ゆり 撮影=大河内禎)

衣装も小道具も、ネタに使えそうだから

椿 私は片づけるのが苦手で、なんでもかんでもとっておくタイプ。ノラちゃんは捨て上手だと聞いているけど、昔からそうだったの?

平野 いえ、子どもの頃は親から「お兄ちゃんと違って、なんで片づけられないの」といつも言われていて。20代で一人暮らしを始めてからも、かなり部屋が散らかっていました。でもある時、徹底的にモノを処分したら風通しがよくなったのか、いいことが起きるようになったんです。

椿 なんで急に処分する気になったの?

平野 私、会社勤めをしたりしていて、デビューが遅いんですね。20代の頃は、芸人になりたいと思いながらも勇気がなくて。どう生きていいかわからず、一時期は働きもせず引きこもっていたこともありました。でもこのままではいけないと思って。片づけを始めたのは27歳の時です。

椿 なにか本は読んだ?

平野 イギリス人女性が書いた『ガラクタ捨てれば自分が見える』という本の影響が大きかったですね。まずは服を捨てて、本やCDは売りました。本の中で、本当に自分の心に触れたフレーズはノートに書き写して。

椿 私も頭では「もっとモノを捨てなきゃダメだ」とわかっているんだけど、芸人は仕事柄、どんなモノでも「ネタに使えるかも」と思うじゃない? 実際、20歳の時に買ったバブリーな服をずっととっておいたから、37歳の時に「17年前」というネタでテレビに出られたわけだし。最近は『鬼滅の刃』というマンガにはまっているので、主人公の炭治郎に寄せたコスプレをしようと思って。弟の端午の節句の兜飾りセットが実家にとってあったので、小さな刀を使いました。

平野 「ネタに使えるかも」と思うのは、芸人の宿命ですものね。

椿 久々に兜飾りを出した時、中からヒマワリの種が出てきて……。20歳まで住んでいた実家では、シマリスを飼っていたのね。リスはいろいろなところに餌を隠すから、兜の中にも隠してたみたいで。でも27年間、ヒマワリの種ごと兜を持っていたのかと思ったら、怖くなっちゃった。